一般認識で言うと「ローコスト住宅」はお求めやすい価格で提示されている住宅でしょう。
しかし、ローコスト住宅に定義はなく、みんなの「大体このくらい?」で成り立っていたり、販売戦略上「ローコスだよ」とうたう会社がでてきて、それが認識されていくこととなります。
一時期「坪単価29.8万円~」なんてテレビCMもはやりました。
ローコスト住宅で、間違ってほしくないのは、
「=低品質」
「=粗悪品」
という訳ではないということ。
ローコスト住宅を販売している会社は、あえて価格の安い商品を戦略的に取り扱い、価格にあった住宅を提供して、利益を上げる努力をしています。
利益を上げるには、売れなくてはいけません。
売れるには、低品質や粗悪品では見向きもされません。
部材や設備の仕入れ、広告費や人件費のコストダウンをします。
1棟あたりの利益が少なくても、多数販売することで運営する。
様々な工夫の結果が、「ローコスト住宅」として実現しているのです。
とはいえどのくらいの価格帯のことを言うのかが気になります。
ローコスト住宅としての「お求めやすい価格」とはどのくらいの価格のことをいうのか。また注意しなくてはいけない点はどんなところなのか。
今回はこのあたりを見ていきたいと思います。
ローコスト住宅の基準とは
先ほども申した通り、ローコスト住宅という基準はありません。
それは、販売する会社によって、ローコストなのか?そうでないのか?の解釈が違うからです。
また、購入する側から見ても同じことが言えるでしょう。
ただし、確実に言えるのは、建築基準法のレベルは最低限抑えつつ、法律で決まっていない部分はモラルに反しない程度に抑え、部材や人件費、また利益などを最小限に抑えて販売している住宅ということです。
住宅の構造は、一番コストを抑えられる「木造」が主流となります。これが鉄骨ともなると、コストが上がってしまうためです。
また、外壁は「サイディング貼り」で、窓は「アルミサッシ」、屋根は「スレート仕上げ」、断熱材は「グラスウール」、住宅設備は最低限その機能を果たす仕様を採用し、例えば、キッチン水栓でタッチレス水栓などのものはオプションとなるでしょう。
住宅の外観は、外壁の部材を少なくできる、凹凸のすくないシンプルな見た目になるのが一般的です。
住宅以外のコストダウンも図ります。
例えば、10棟一気に建築をすれば、その分仕入れ単価が下がるのは分かると思いますが、建築中の仮設水道やトイレなどの数も、まとまった分譲地であれば個数を減らすことができます。
上記は、一例なので定義でもなんでもありません。
しかし、ローコストにするには欠かせない基本となる部分でしょう。
そして、重要なのは施工する大工さんなどの「人件費」です。
建築会社によると思いますが、1日あたりいくらとする場合と、1棟あたりいくらとする場合があります。
ローコストにするためには、1棟あたりいくらで請け負うことが多いと思います。そうすることで、工期が伸びたときでも、販売価格に影響がなくなるためです。
一般的に言われるローコスト住宅の坪単価
定義がないローコスト住宅の価格ですが、一般的に言われている坪単価を見ていくと・・・
「20万円台~40万円台」
とするところがボリュームゾーンとなっています。
実は、この坪単価にも定義がありません。
販売する側が、どこまでが坪単価に入っているのかを決めているので、同じ坪単価30万円と言われても、単純に比較することはできません。
諸費用等コミコミの総額で言うと、1000万円台(~1999万円)というところでしょう。
家の大きさで言うと、35坪前後の大きさがボリュームゾーンになります。
家賃並みの一戸建てを手に入れた!でも維持費はハイコストの怪!?
ローコスト住宅の魅力は、なんといっても住宅ローン返済額の低さでしょう。
1000万円台で住宅ローン35年固定金利(1.4%)で組むと、
- 1300万円だと月々約3.9万円
- 1600万円だと月々約4.8万円
- 1900万円だと月々約5.7万円
家賃並みの住宅ローンで返せるという言葉は、ローコストの鉄板でしょう。
上記の価格で住宅が手に入るとなると、家賃より安くなるかもしれません。
しかし、一戸建てでは、住宅ローン以外にかかるコストが存在します。
よく言われるのが・・・
- 固定資産税
- 不動産取得税(購入時1回のみ)
賃貸に住まないのであれば、ローコストでなくても、この費用はどうしようもありません。
注意したいのは、下記の3点です。
- 火災保険料
- 地震保険料
- 快適性・光熱費・耐久性
ローコスト住宅の注意点【火災保険料】
火災保険料は、加入する損害保険会社により変わります。安いところは、いくつか見積もりを取り比較しないと出てきません。住宅ローンを利用する場合は加入が必須です。
この火災保険料は、大きく2つの料金体系があり、燃えにくい建物ほど安くなる仕組みを持っています。
ローコストで建築をする場合、主流となっているのが「木造」です。
木造は、火災保険上、燃えやすい構造として認識されています。
保険料は、木造なのか、木造以外(鉄骨、鉄筋コンクリート)なのかで分かれます。
- T構造(一般木造以外)
- H構造(一般木造)
H構造となる住宅は、燃えやすいので、火災保険料が高く設定されています。
保険会社によって、価格はまちまちですが、T構造とH構造の保険料の違いには、びっくりするほどの差(約2倍)が生まれます。
最低限、住宅ローンを支払っている間はずっとです。
すると、木造でローコスト住宅となると、高い火災保険料を払わなくてはいけないのか?
回避策が1点あります。
それは、「省令準耐火構造」とすることです。
木造でも、耐火性能が高い「省令準耐火構造」にすることで、T構造と同じ部類に仕分けされます。
ローコスト住宅でも「省令準耐火構造」にしないと、火災保険料が高くなるので、住んでからの負担が増えてしまいます。
契約する前に、チェックしておく項目の一つです。
ローコスト住宅の注意点【地震保険料】
地震の多い日本では、地震保険に加入する割合がものすごく増えています。
しかし、地震保険は、火災保険の付随保険という位置づけとなることから、単体で加入することができません。
必ず火災保険とセットでの加入になるということです。
火災保険との違いは、どの損害保険会社で加入しても保険料は同じという点です。
地震が原因で、火災が発生した場合、地震保険に加入していないと、火災保険だけでは保証されないことになります。この理由から、先ほど火災保険ででてきた、T構造とH構造が絡んできます。
簡単におさらいします。
- T構造は燃えにくい構造
- H構造は燃えやすい構造
でした。
つまり、地震が起きて火災に弱いH構造は、危険度が高いので、地震保険料が高いということになります。
保険料の差が一番大きい「徳島県と高知県」の地震保険料を見てみましょう。
保険料T構造 | 保険料H構造 | 差額 |
15,500円 | 36,500円 | 21,000円 |
地震保険1000万円あたりの1年間の保険料
地震保険掛け金は、火災保険料の半分となっています。
2000万円の火災保険に加入した場合、最大で1000万円までの地震保険に加入できるということ。
省令準耐火構造にしない場合は、上記の差額21,000円を、住宅ローンの35年間1年ずつかける場合73.5万円も多く払うことになります。
省令準耐火構造にするコストと、自分の町の火災保険と地震保険の掛け金の比較が必要になってくるでしょう。
各都道府県別の地震保険料など、詳しくは住まいの地震保険の選び方!家の性能で4約倍の差が付くことがあるで紹介しています。
ローコスト住宅の注意点【快適性・光熱費・耐久性】
ローコストに住宅を建築するため、高性能な高い断熱材を使用することはありません。
耐震については、法律で定められた耐震性を確保しなければ、販売することができませんが、この断熱性能に関しては、義務化されていません。
正確に言うと、2020年に省エネルギー基準が義務化される方向性で進んでいましたが、2018年12月に延期されることが決まりました。
詳しくは国土交通省は2020年省エネルギー基準適合義務化「延期」の方針を示した【2018.12.6住宅産業新聞】で紹介した通りです。
義務化されると、ある一定の性能を確保しなくてはいけませんが、そうではない断熱性能は、コストがかかる分、削られる部分でしょう。
大手ハウスメーカーや数を販売しているビルダーには、設計士に断熱性能(省エネ性)の説明を義務付けるようになりますが、ローコストでは強制力はないでしょう。
前置きが長くなりましたが・・・
【快適性】
断熱性能が低いことで、「夏暑く、冬寒い」家となり、快適性が損なわれます。
【光熱費】
そうなると、冷暖房機器をフル回転して、快適性を得ることになるため、光熱費が高くなる傾向にあります。
【耐久性】
さらに、冷暖房をフル回転させるために、家と外気の温度差が生まれ、結露を誘発したりするので、家の耐久性が落ちる原因ともなります。
ローコストが長持ちしない理由の一つがこれになります。
構造に使用される、建材等もローコストに抑えられるため、腐りやすくシロアリの被害に遭いやすいものとなります。(絶対ではありませんが、良いものを採用すれば、それだけコストが上がります)
そこに、結露水がつくと、木材は弱り、シロアリが好む材と変化します。
そうならないためには、しっかりとしたメンテナンスが欠かせません。
つまり、それだけメンテナンスに費用が掛かるのがローコストなんです。
メンテナンスをしなければ、家の寿命が短くなり、要はコストパフォーマンスが悪い家となってしまいます。
建てるときはローコスト。でも、住んでからはハイコスト。
必ずではありませんが、危険性を認識して選ぶことが必要でしょう。
まとめ
こんかいは、ローコスト住宅に焦点を当てて紹介してきました。
ローコスト住宅は、ただ単に価格が安い住宅という認識ではなく、必要最低限の設備を備えた住宅と言えます。
しかし、それは後にハイコスト=コストパフォーマンスの悪い家へと変貌していく可能性を秘めているリスクもあります。
限られた予算の中で、何を重要視したらいいのか?
一つの建築会社に絞らず、多くの資料に目を通し、知識を増やすことをおすすめします。
次回は、もう少し踏み込んで住宅に必須知識となる【光熱費】などにも触れていきたいと思います。
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